【オリジナル小説】ザ・グレイト・エスケイプ【第12話目】

ザ・グレイト・エスケイプ オリジナル小説

第12話 終わらせる者

 認識できなければ死んだも同然。

「まァ、ぶっちゃけいなくても困らないよね。空気だし」モモが言った。「って言うかアイツ、臭いよね? 空気なのに」

「そういうことを言ってはいけませんよ」レッドが眉をひそめた。

「べつにいないんだから良いじゃないですか。本人の耳に届かなければ言ってないのと変わらないですよ。ねェ、先生だって本当は臭いと思ってたでしょう?」

「そうですが」

「ほらやっぱり。こんな狭いシェルター内であのスカンク野郎といっしょにいたら窒息しちゃいますよ。空気なのに」

 機嫌が悪いのか、とくに仕事が無く、暇を持て余しているのか。手持無沙汰にドライバーを弄んでいる。リンがかけていたメガネをひっかけてクルクルと回していた。本人不在を良いことにモモは言いたい放題だ。さらに鼻をつまみながらベッドの下を覗きこむ。

「ねえ、リンもそのうち臭い始めるのかな?」

「さあ……一日やそこらじゃ、そんなに腐ったりしないとは思うけど」

 ユースケもベッドの下に目をやる。

 さすがに死体をそのままに晒しておくことははばかられたため、毛布に包み、ベッドの下に安置してある。

「マキオも戦力外ではあるんだけど、容疑者が不在なのは困るなァ」ユースケはウィンドウに向き直り、時計を睨みながら言った。

 現在の時刻は午後10時50分。

 コンパイルは多少遅れているものの、完成まで残り10パーセントを切っている。不測の事態が起こらなければ時間内に完成する見込みだ。

「やっぱりマキオが臭う? あ、これ犯人かって意味ね」

「わかってるよ。マキオにも不審な点はあるから」

「どこどこ?」

「さっきも見せたけど、消える順番だよ」

 ユースケは、データベースから拾った消え残りメンバーのリストをウィンドウに表示させる。

 結局、ユースケは全員に告知をした。今日消えるのはアナタです、と。得られる情報は全て得たいと申し出で、必ず事件の原因を突き止めてみせるからと説得した。と言っても、この場で知らずにいたのはジョーだけだったので、主に彼に向かって説いたのだが。意外にもジョーはあっさりと応じてくれた。それを不思議に思いながら話を続ける。

「ほら、マキオはリストの真ん中に位置してるだろう? 連絡の取れていない残りのマスターがリストのどこに入るのかがわからないんだ。そのため明日消えるか、明後日消えるか判然としない。『ならば誰かを殺して繰り上げてしまえ』と考えても不思議じゃないよね」

「でもさ、それで延命できるかどうかもわからないし、第一、マキオはそのリストの存在を知らないんじゃないの?」

「まあね。でもマキオって臆病そうだから、差し迫って『誰でも良いから殺してしまえば助かるかもしれない』って考えに至ることもあるんじゃないかな。その点で、リンは都合が良い。彼女はマキオを認識できなかったわけだし」

「リンってさ、マキオのことハブいてたわけじゃなくて本当に見えてなかったのかな?」

「とても演技だとは思えなかったけど……本人に確認できないしなァ」

 ユースケはベッドの下を気にした。

「でもなァ、どうやってこのシェルターから出たのかが問題なんだよなァ。マキオには扉を壊したり、ロックを解除する技術なんて持っていないはずだし」

「やっぱりさ、まだ来てない人物が怪しいよね」

「それこそ不可能だよ。建物の外にいるんだよ?」

 地図上では、たしかに8人目が存在していることになっている。残りのマスターも現在地は全員、グランマに集結しているはずなのだ。中に入れず立ち往生しているのではないかと想像しているのだが、それにしては一向に連絡してくる気配がない。

「わからないよ」モモが反論する。「やっぱり管理者がいるかもしれないし。きっとボクたちの知らない秘密鍵を持っててさ、どの部屋へ行くにもフリーパスってわけ」

「なんで管理者がリンを殺す必要があるんだ?」

「さァ。べつに理由なんてないんじゃない?」

「適当だな」

「じゃあさ、快楽殺人ってやつ? ほら、人間ってさ、見るなって言われると意地でも見たくなったりするじゃない。マスターの死ぬところが見たいんだよ。管理者ならきっと何とでもなるだろうし、ずっと独りでこんな所に閉じこもってたら気が狂っちゃってもおかしくないよね?」

「うーん……」

「それがすべての元凶だって考えればいろいろ都合が良いじゃない。人類をじわじわと消失させて、残ったマスターがここに集まるように仕向けてさ、最後は一人ひとり殺していくの」

 ジョーが悲鳴をあげた。

「やめてよゥ。そんな怖い話。ボク、苦手なんですよ」

「なんだよ。キミ、今日消えるって話は平気な顔で聞いてたじゃないか」

「そうだけど、モモさんの話は生々しいんですよ」

 ジョーは自分の体を両手で包み、涙目になっている。隣にいたアリアがジョーを慰める。

「おォ、よしよし。お姉さんがついてるぞゥ」

「ボクの方が年上みたいだけど」

「でも、ほんとうに冷静だねェ。ジョーくんはもっと泣いて取り乱すかと思ったのにィ」

「なんで残念そうなんですか?」

「消えちゃうのは平気なのに、殺されるのはやっぱり嫌なんだねェ」

「もちろん、消えた後どうなるのか不安です。でも変な話、リンさんの死体を見て思ったんです。殺されるくらいなら消えてしまう方が楽なんじゃないかって。死体なんて初めて見ますし、考え方が変なのかもしれないけど」

「そんなことないよゥ」

「目の前で家族が消えた時はすごく悲しかったけど、今はそうでもないんです。みんなが傍にいるからさみしくないし。それよりも一番最後まで残される方が嫌だなって」

 その意見についてはユースケも同じだった。ユースケは、消えゆく者の為に頑張ろうとか、死んでしまったリンの為に報いよう、といったポジティブな感情で動いていない。

 やはり感覚が変なのか。リンの死はショックではあったけど、一時の興奮が治まると死体は見慣れぬオブジェくらいにしか見えない。それよりも、残された側の方がつらいのではないかと想像する。

 その、最後に残る者は決定しているのだが。

「事件についてジョーくんはなにかアイディアはあるのォ?」

「まったく全貌はつかめませんけど、殺して繰り上げるっていう発想はちょっと変だと思います。むしろ減った分だけ順番が早まるんじゃないですか?」

「焦ってる時にそこまで考えるかなァ?」

「じゃあ、この中に人を殺してまで消え残りたいなんて思ってる人はいますか?」

 殺人犯が正直に答えるはずもないのだが、ジョーは真顔で問いかける。当然、誰も反応しなかった。

「マキオさんだって、そんな度胸はないと思います」

「そうなると、やっぱり最後のメンバーが怪しいよねェ」

「ボクはそうは思いません」

「なんでェ?」

「たとえ管理者だったとしても、外に取り残されちゃってるかもしれない人にしたって、たった一人だけなんでしょう? きっとすごく心細い思いをしてるんじゃないでしょうか? ボクだったらどんな人であっても生きて傍にいてほしいと思うな」

「その割には全然連絡してこないけどねェ……」

 アリアは、壁に投影しているスクリーンに目をやる。リンの残したケータイを開きっぱなしにしてあるのだ。画面に映されているのは緊急掲示板で、それはリアルタイムで自動更新される。

「8人目って本当にいるのかな?」つられて掲示板を見たユースケが言った。「やっぱり一人足りないんじゃないかなァ」

「遅刻してきた人はいないってことォ?」

「それどころか、管理者もスタンドアロンもいないんじゃないかな。だけど、設計者はいたのかもしれない」

「まさかァ」

「大昔の話だよ」

「でも、それじゃあ辻褄が合わないよねェ」

「なんの辻褄だかわかんないけど」

「毎日きっちり半分ずつ。その法則が崩れると気持ち悪くなァい?」

「それが突破口かもしれないじゃないか。そもそも、ボクたちが勝手に信じ込んでるだけで、その前提は間違ってるかもしれないんだよ」

「それを言っちゃあお終いですよゥ」

「前提っていうのはね、限定的な時間と空間内でしか適用されないんだよ。説明のつかない事象が発生しても、その範疇から外れた事象は問題として扱われなくなってしまう。だけど、だからと言って存在しないとは言い切れない――リンが死んでしまって、ひとつわかった情報があるんだ」

「なになにィ?」

 ユースケは、地図に表示された総人口を指す。

死んでしまってもカウントが減っていないんだ。つまり、消えることと死ぬことは同義じゃないってわけ」

「消失した人類も生きてるかもしれないってことですね?」ジョーが声を弾ませた。

「不確定だけどね。可能性はゼロじゃない。ジョーの家族だって、どこかで生きているのかもしれないよ」

 そう教えてやると彼は、ずっと不安そうにしていた顔をほころばせた。

「いるのか、いないのかはっきりして欲しいですよね」

「自分で確認するまでは何事も不確定なんだよ」

 シュレディンガーの猫だにゃあ、とアリアが猫なで声をだした。

「不確定と言えば、マキオも生きてるんだか死んでるんだか……」

 生きていても、死んでいてもリストの数が変わらなければ確かめようがない。連絡手段も確認していない。やむを得ず、別室に閉じ込められているはずのマキオに向けて掲示板にメッセージを書き込んでおいたのだが……しかし、新たな書き込みはない。

「心配だなァ。全然更新される気配もないし、リンと同じように殺されてるんじゃないかなァ?」

「マキオのことだし、きっとゲームに夢中で気がついてないだけだよゥ」

「そうだと良いけど」

「そんなに心配なら、扉を壊して確認してこようか?」モモがきいた。

「モモはビルドに集中してよ。動かないでいた方がアリバイになるし」

「ボクを疑ってるの?」

「ボクを含めて全員容疑者さ。まァ、ここにいる誰かが犯人なら、これ以上殺人を犯したりしないだろう。またトラブルがあれば零時には絶対間に合わないからね」

「で、ユースケはさっきからなにを創ってるわけ?」モモがきいた。

 ユースケは別の作業にタスクの半分を割り当てている。そのためコンパイルの時間がおしているのだ。しかし、その牽制は半分本音であり、建前である。

 開かずの扉は貴重なソースなのだ。破壊されては堪らない。

 ユースケはビルドをする傍らで、モモから工具を借りて電子部品を組み立てていた。

「ふふん。ちょっと神様を復活させてみようかなって」

「そんなの人間に創れるもんか」

「劣化コピーなら創れるさ。ほら、できた」

 そう言って見せたのはプラスチック板で電子部品を囲った小型の箱だった。ケーブルをコンセントに差してバッテリーを供給させる。

「さて、ブラックボックスには何が入っているのやら。箱を開けてのお楽しみっと」

 ユースケが電源ボタンを押下すると内部から駆動音が聞こえ、冷却ファンが風を送る。カタカタとディスクが回転し、記憶領域の読み出しを始めた。ほどなくして、ユースケのデュアルディスプレイに新たなウィンドウが開く。青いバックスクリーンに白い文字が浮びあがった。全員が画面に注目する。

「見たことのない言語だね。これはなにかのプログラム?」

 高速で流れるプログラムをユースケは瞬時に読み取っていく。

「……おそらくグランマのソースコードじゃないかな」

「マジで? だとしたらすごい発見じゃないか!」モモが感嘆の声をあげた。

「ただし、ほんの一部だけだし……もしかしたら試作品かも」

「いつの間にそんなもの見つけたのさ?」

「これ、モモが見つけたハードディスクだよ」

「あァ、ボクが壊しちゃったやつ……」

「なんとか読み出せないかと思ってさ。そこら辺に散乱してる部品を回収して、組み立て直たんだ。ファイル転送の規格は大昔から変わってないみたいだから、ボクのパソコンにトランスポートできたってわけ」

 ワタシにも見せて、とアリアが顔を近づけた。

「すごく綺麗なプログラムだねェ」

 一読するとアリアは瞳を輝かせた。

 プログラムも言語である以上、美しさや醜さがある。ただし小説などと違って、余計な演出や脚色は必要ない。

「たぶん制作者しか見たことがないんじゃないかな」

 それなのに誰かに読ませることを前提としたようなリーダビリティだ。注釈まで書かれている。そして漏れもだぶりもない。一つひとつの関数や配列・構造体などがシンプルで力強い。機能を実現するためだけに特化した、洗練されたストーリーがそこから汲み取れる。姿は見えずとも、雄弁に語るプログラムを通してグランマというキャラクターが浮かんでくるようだった。

 そして製作者の隠された意図も――

 プログラムの最終行がディスプレイに映し出される。そこには一つの関数がコーディングされていた。

「この関数は――」

 その関数名を見てユースケは眼を見開く。呼び出しと同時に慌ててケーブルを引き抜いた。

「どうしたのです?」

「レッド、サーバーからパソコンを切り離してください!」

「そんなことをしたらパフォーマンスが低下してしまい――」

「良いから早くッ!」

「わかりました」

 レッドはケーブルを外し、サーバから離脱する。しかし、パソコンが命令を拒否している。強制的に通信が交わされる。

「接続が、解除できないッ!」

 それは他の者も同様だった。

 そして突如。

 全員のパソコンに無数のウィンドウが開く。画面が赤く点滅し、大音響で警報アラームが鳴った。それに負けないくらい大声でレッドが叫ぶ。

「何事です!?」

ウィルスです!」

「先生、ディスプレイを見て!」モモが耳を塞ぎながら言った。

 画面にコンパイラエラーの文字が噴出している。

「まさか――」レッドがフォルダを開く。「ファイルがない!」

 そこにあったはずの検索エンジンプログラムのファイルが消失しているのだ。

「ユースケさん、直ちに停止させてください!」

「やってます!」

 だが止まらない。命令を受け付けない。そうこうしている間にもファイルは片っ端から削除されていく。

 消失。

 消失。消失。

 消失。消失。消失――

 開いた隙間を埋めるように、ディスプレイには消失の文字が書き加えられていく。

 ユースケの意志とは無関係に、データが消失されていく。

 これは誰の意志だ。

 ユースケのウィンドウにホログラが浮びあがった。

 CGで創られたキャラクターだ。透き通った肌に真っ白なワンピースを纏っている。うつむき加減に見下ろすその顔からは表情が読み取れない――否、白い仮面を被っているのか。長い銀髪が揺れ、その仮面を覆い隠す。そしてまた露わになると、そこに湾曲した一本の黒い線が描かれていた。

 泣いているのか? 小さな声がシクシクと聞こえてくる。冥府に誘われるような、零と一に還元されるような、深く、悲しげな慟哭だ。

 その周波数とシンクロするようにジョーが身を震わせる。

「なんなの、この子?」

「人間じゃない――これがウィルスなんだ!」

「この子がウィルス?」

 ウィルス。

 人の形をしたその悪意の塊は、憑くようにレッドに頬に両手をあてた。そして無言で口を動かす。否、喋っているのか? その声はユースケたちの耳に届かない。しかし、

「おォ。アナタは、グランマ……」

 レッドの目の色が悪魔に魅入られたように変わった。

「感染したのか――レッド、気を確かに」ユースケが彼を揺さぶる。

「ワタ……さ――」

「なんだって?」

 レッドの口が動く。何かを伝えようとしている。

 耳鳴りがした。ウィルスは電波障害が起きたように姿を歪ませる。その直後、

 ――探さないでください

「痛ッ――」ユースケは頭痛に見舞われた。「頭がッ!」

 それは周波数を変えたラジオのようにノイズ混じりで、耳を塞いでも、否が応でも脳に届いた。

 ――ワタシを探さないでください。

 今度ははっきりそう聞こえた。ユースケは苦痛にゆがんだ顔をあげ、ウィルスに注目する。

 ワタシを探さないでください。

 ワタシを探さないでください。ワタシを探さないでください。

 ワタシを探さないでください。ワタシを探さないでください。ワタシを探さないでください――

 ウィルスは同じセリフを何度も繰り返す。脳に刷り込むように、何度も何度も繰り返す。

 ワタシ? ワタシとは誰だ? 

 まさか……いや、しかし。いったい、なぜ? 

「このウィルスがここに……」

「ユースケ、このウィルスを知ってるの!」モモが叫んだ。

「知ってる。だけど……」

「だったらなんとかしてッ。対処方法はないの!」

 ユースケは首を振った。

「ワクチンはない。物理的に切断するくらいしか――」

 しかしそれすら許されない。強制的に繋がれている。後はもう、

「殺してくれ」とレッドが言った。

 それは脳に直接響くことなく、耳に届いた。

「モモ」

「先生ッ」

「自我が保てない。ワタシを殺しなさい。ワタシが、ワタシでなくなる前に……」

 レッドは、己の輪郭を取り戻そうと必死にもがいているようだった。

「わかりました」モモはレッドの視線を受け止め、ドライバーをかまえる。

「待って!」

 ユースケはモモを制止した。しかし彼女の力は強い。

「迷っている暇はない」

 そう言ってユースケを振りほどく。殺気をのせて、ドライバーの先端をレッドに向けた。しかし、

逃げてェ――!

 そう叫んだのはモモだった。

 それでももう止められない。止まらない。

 レッドの頭部にドライバーが突き刺さる。頭蓋骨が割れ、記憶領域が露出する。それを勢いのまま一刀両断にした。

 レッドが倒れ、ユースケは跪いた。

「なんて事を――」

「ボクはボクの役目を果たしただけだよ」血に濡れたドライバを振り払いながらモモは言う。「ボクも本当はエンジニアになれなかったんだ。だけど、こういう時のために先生はボクを傍に置いてくれていたんだよ。ボクは――」

 ターミネーターなんだ、とモモは言った。

「やっぱり、そうだったのか」

 終わらせる者。ターミネーター。

 エンジニアに危険は付き物だ。有事の際は、守るべき対象のために自らの命を緊急停止させることもある。しかしマスターは自殺ができない。だからレッドのように正式なエンジニアとなれば、モモのような己を止めてくれる存在を傍に置いているものだ。

 エンジニアは非情でなければいけない。機械のように躊躇いなく、自分を殺せる人間にならなければいけない。だけど……

「狂ってる」ジョーがつぶやいた。「エンジニアって、そこまでしないといけないものなの?」

「しなくちゃいけないんだよ」

 その問いにモモは毅然と答えた。

「守るべきモノのプライオリティを間違えちゃいけないんだ。そうだろう、ユースケ?」

 優先順位。プライオリティ。

 ユースケはそれを守ることができなかった。厳然として存在する秩序を乱してしまった。

 ――みんなどこか変なんだよ。

 機械を機械と思えなくなってしまったから、ユースケはエンジニアを挫折した。

 ウィルスが停止した。

 レッドはかすかに息をしている。強靭な精神力だ。

 モモは涙を零して駆け寄った。それから頭をフロアにこすりつける。

「先生、ごめんなさい」

「……謝る必要はありません。よく――やってくれました。もう――眼が見えません……ユースケさんはどこに?」

「ここにいます」

「あとは頼みましたよ」

「レッド……」

「最期に――グランマと逢えてよかった……あァ」

 やっと逃げられる。

 そう言い残してレッドは停止した。

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