【オリジナル小説】ザ・グレイト・エスケイプ【第3話目】

ザ・グレイト・エスケイプ オリジナル小説

第3話 人間に必要なもの

 世界が消失することに比べたら、人生初の彼女が人形だなんて、取るに足らない事象だ、とユースケは自分に暗示をかける。

「なに暗い顔してんだよ?」マキオがユースケの顔を見て言った。「ケータイ、ちゃんとゲットできたんだろ?」

「ええ、まあ、はい……」

 もれなくマリィがついてきて、その隣にリンもついてきて、3人仲良く手をつないでいるわけだが。とにかくユースケはケータイを手に入れ、

 大事ななにかを失った。

「2次元のキャラクターだって嫁になるご時世なんだしよ。3次元の彼女ができてよかったじゃねェか」

 なんのフォローにもなっていない。すでにマキオはこの状況に適応している。

 たしかに3次元ではあるが、しかしマリィは人形だ。意思の疎通はできない。ユースケの体温が一方的にマリィへと流れていくだけだ。

 それでもリンは満足そうに笑う。

「よかったわね、マリィ。こんなポンコツのどこがいいのか理解に苦しむけれど、アナタが幸せならワタシも幸せよ」

 なぜボクなのか、ぜひボクもうかがいたい。危うくユースケもマリィに話しかけそうになった。

「ほら、アリアもなにか言ってあげてよ」

「マスターなんて爆ぜてしまえばいい」アリアはその場に正座し、ふんと鼻を鳴らして顔をそむけた。「でも、爆ぜるのは連絡取ってからにしてねェ」

 可能ならそうしたい。質量のないケータイに映る自分の顔を見ながらユースケは心の中でそう叫んだ。消える前に彼女ができて喜ぶべきなのか。右手から徐々に、リンの世界に侵されている気がするが、とにかく。無事マリィからケータイを借り受けることができた。

「……あれ?」

 ユースケは、ケータイを展開させたところであることに気がついた。

「どうした?」マキオがケータイをのぞき込む。「もしかして使い方がわからないなんて言うんじゃないだろうな?」

「いや、使うのは初めてですけど。感覚でわかりますよ」

 ユースケは機械に強い。ケータイも最新機種というだけあってユーザビリティが高く、操作方法はすぐに理解できた。しかしそれとは関係なく、これはおかしいと思った。

――変だ。

 変といえば、すべてが変なのだが。このケータイ、どうしてこんな設定にしてあるのだろう。その理由がわからない。この違和感をリンにただしていいものか。

 ユースケは横目でリンをうかがおうとした。しかし、

「じゃあ、さっさと連絡しろよ。使えねェな」

「……」マキオに急かされ、ユースケの思考が途切れる。

 そして、アドレス帳をめくりながら、外にいるマスターの連絡先を知らない事に思い至った。けっきょく、掲示板に状況を記し、マリィのケータイ番号に連絡を貰えるよう番号を書き残すくらいしかできなかった。誰かが気づいて連絡してくれることを祈るしかない。

「んだよ。ケータイ意味ねェじゃんか」

「いや、連絡さえ貰えればメールや掲示板より状況を伝えやすいですし……」

「なんとかなるのか?」

「あまり期待しない方がいいですよ。まァ最悪、壁を壊せば出られなくはないでしょうし。でも、なんだか罰当たりな気がするなァ」

「いまさらきれいごと言っても始まらねェだろ。すでに聖域荒らしまくってるんだからよ」

「そうですけど……」ユースケはぼやきながら壁にもたれた。

 壁は傷ひとつなく、静謐な鏡のように透き通っている。しかし薄暗いせいか、顔を近づけても反射することはなかった。

「とにかく後は待つしかありませんね」リンが扉の前に座りこむ。

 それに合わせてユースケも引っ張られた。

「あの、リン? そろそろ手を放してもいいかな?」

「ダメです。わかってるんですか? アナタとマリィは恋人なんですよ? ふたりはひと時も離れちゃいけないんです」

「でもずっとこのままってわけにはいかないだろう?」

「なんです、その態度は? 用がすんだら捨てる気ですか?」リンは顔を真っ赤にした。

「いやッ、そうじゃなくて」

 ユースケは慌ててなだめた。リンとくっついたまま行動するのが不自由であると主張しているだけなのだが、その真意がうまく伝わらない。

 しどろもどろになるユースケにリンはさらに試練を課した。

「じゃあ、好きって言ってあげてください。態度で示してあげてください」

「……えッ? マリィに?」

「ほかに誰がいるんですかッ!」

「でもそれは――」

 非常に恥ずかしい。物言わぬ人形相手にそんな戯言ざれごとを繰り出せるはずがない。しかも人前で。どうしようかとユースケは必死に考えを巡らせる。

「じゃ、じゃあこうしよう。ちゃんと伝えるから、マリィとふたりきりにしてもらえないかな?」

「えッ?」

「手、放してもらってもいい?」

「あッ、そ、そうよね。ゴメンね。気が利かなくて。邪魔しちゃ悪いわよね」リンはマリィに話しかける。「あァ、さみしくなるわ。でもワタシたちずっと友達だからね」

 その目には大粒の涙が玉になって留まっている。名残惜しそうに手を放し、ちいさくバイバイと手を振った。垂れ下がったマリィをユースケはそっと受け止める。リンの前では粗末に扱えない。ひどい罪悪感に駆られてしまった。

「ユースケ」

「はい」リンに呼ばれてユースケは姿勢を正す。

「浮気しちゃダメよ」

「しません」

「大事にしてあげてね」

「はい」

「でも、マリィにエッチなことしたらコロスから」そう言ってリンは睨んだ。

 ……しねェよ。

「え、しないのォ?」アリアが驚いたように振り向いた。「なんでェ?」

「するわけないだろ。相手は人形だぞ」

 ユースケは、リンの視線に怯えながら小声で答える。

「じゃあ相手がスレイブだったらァ?」

「しないってば」

「しないんだ……」

 ふゥん、と言ってアリアは何度もうなずく。

「なんだよ。なにが言いたいんだ?」

「別にィ」アリアは頬を膨らませると、再びそっぽを向いた。

「……」

 妄想豊かな友達に、物言わぬ恋人。そして反抗的な従者に囲まれ、ユースケはやり場のないストレスを頭痛と共に抱える。そんなおかしな空気を払い退けたのは空気を読まない暴君だった。

 ぐゥ――と、マキオの腹が鳴る。

「ああ、腹減ったなァ」

「ワタシもお腹が空きました」伝染したようにリンもお腹をおさえる。「そういえば今日はまだ食事を摂ってませんでしたね……」

 ずっと緊張していて忘れていた。ユースケは、こんな状況になるなんて全く予期していなかったため食料を持参してこなかった。最悪、最長で4日間は監禁状態になるのだが、エネルギー源となるバッテリーさえ省エネにしておけば充分もつ。

「もうすぐお昼だねェ」アリアは時間を気にした。彼女はバッテリーだけで動ける。食事を摂る必要はない。

「ここに食べ物は備蓄してないのかなァ?」

「見ての通りだよ」

 半径10メートルほどの平らで四角い空間には、食べ物どころか調度品などの障害物が一切ない。唯一モジュラージャックが1か所、フロアに設置されているだけだけなので見落とすはずがなかった。しかしマキオは鼻を動かす。

「いや待て。なんかにおうぞ……奥の方からだ」

 そう言うと扉から離れて辺りを嗅ぎまわる。

 ユースケは、それは自分の体臭ではないのかと呆れつつその姿を見守った。

「マキオのやつ、お腹が減りすぎて妄想が具現化しちゃってるんじゃないのか?」

「でも、たしかに。どこかから美味しそうな匂いがしますね」リンも小鼻をヒクヒクさせる。

「本当かなァ?」

「なんですか、ワタシの言うことが信じられないんですか?」

「信じます」

「ワタシたちももう一度探してみようよゥ」

「なにもないと思うんだけどなァ……」

 ぼやきつつユースケも捜索に加わる。できれば空腹は満たしたい。ケータイの薄明かりを頼りに、壁を探りながら伝っていく。アリアもユースケにならって壁を調べはじめた。

「においが漏れてるって事は、どこかに換気口とか抜け道があるのかもしれないねェ」

「だね。でもそれってさ、やっぱりマスターとか、人間が立ち入る事が前提になるよね。自己修復できるなら人間なんて異物でしかないと思うんだけどな……」

「グランマさんのシステムってやっぱりどこかおかしいよねェ」

「設計者、やっぱり思い出せないか?」

「うーん。思い出せないっていうか、最初っからインプットしてなかったのかなァ?」

 アリアはこめかみに指をあてる。記憶領域に保存してあるデータを検索しているのだ。しかし、やはり1件もヒットしないようだ。

「そんなに気になる?」

「グランマの設計思想がわかれば、もしかしたらシステムを復旧させられるんじゃないかなって。そしたら今起きてる事件の一端でも掴めるかもしれないし」

「お、ヤル気だねェ。血が騒ぐ?」

「そうでもないけど」ユースケは素っ気なく返した。「でも、必ずなにか致命的な原因があったはずなんだ」

フェイタル・エラーだねェ。でも、グランマさんはこの世界が嫌になったから逃げちゃったんでしょう?」

「それにしては親切すぎるし、中途半端だ。マスターはみんな思考が麻痺しちゃってるみたいけど、グランマはこの世界の支配者なんだ。ボクたちはその恩恵なしでは生きていけない。だから逃げる必要なんてなくて、何か不満があるのなら、システムを丸ごと破壊したって誰にも文句は言えないんだよ」

 過激だねェ、とアリアは笑う。

「設計者がなんらかの意図を持って引き起こしたとしかボクには思えないんだけどなァ……」

「でも、マスターが消失した原因はさァ、直接グランマさんにあるわけじゃないんだよねェ?」

「それはまだ不確定だけど。こんな偶然の一致はあり得ないよ」

 ヒューマンエラーシステムエラー

 マスターが消失し、グランマが逃亡した理由。片方だけでも大事件なのに、それが同時に多発するなんて不可分では考えられない。

「グランマさんの犯行だったとして、なんで1日に半数しか消失させないんだろうねェ?」

「おそらくプログラムにバグがあるんだろう」

「バグ、見つかるかなァ? 設計者の意図だって、そんなものないのかもしれないのに」

「必ずあるさ」ユースケは不敵に笑う。

「どうしてそんなことが言いきれるのォ?」

「わかんないかなァ?」

「わかんないよゥ」

 つまりね、とユースケは人差し指を立てて言った。

「人間にはストーリーが必要なんだよ

「ストーリー?」アリアは首を傾げる。

「ほら、人間ってさ。生きてるだけでも生きられるのに、なにもしてないと無性に死にたくなるってことあるだろ?」

「ワタシにはわかんないよゥ」

「生きる意味、つまりストーリーが必要ってこと。それはアリアやグランマというキャラクターになにかを実行させるときも同じで、そこに設計者の描くストーリーが正しく実装されていなければ上手く機能しないんだ」

「なんだか擬人化してるみたいだねェ。グランマさんはさしずめ女王様ってところかな?」

「そう。人間は相手が機械だろうと感情移入できるんだ。それにグランマには人工知能が搭載されているんだ。べつに不自然じゃないさ」

「設計者さんはなにを考えてグランマさんを創ったんだろうねェ?」

「もちろん、表向きはマスターをコントロールするためだろうね」

「裏なんてあるのォ?」

「なんでも本音建前ってものがあるんだよ。他人にストーリーを語るときなんか特にそうさ。オブラートに包んだり、例えを持ちだしたり、他人の台詞を引用したりして装飾したりね。だけどプログラムは人間と違って嘘はつけない。グランマのコードをトレースすれば、設計者のストーリーが理解できるかもしれない」

「変なの。コードなんて読むんだ」

「正常な人間なんていないよ。誰もが自分は正常なんだ、ってフリをしてるだけで、ほんとうは誰だってみんなどこかおかしいんだ」

「それもストーリー?」

「そう。自分を偽るために装飾したストーリーだ」

「騙せるものかなァ?」

 場合によってはね、とユースケははにかみながらアリアの問いに答えた。それから左手の甲を透かす。ぼぅ、と点滅するナノチップを眺めていると心が落ち着く。

「でも、そうやって創られたストーリーに、ほんとうは特別な意味なんてないんだ。飾りを取ってしまえば残るのは中身のない空箱だけさ」

「グランマさんもそうだとしたら調べる意味がなくなっちゃうけど」

「意味なんてないならないでかまわないんだよ」

「よくわかんないなァ」

「意味のないものに意味を求めるから話がややこしくなるんだ。いいかい? バグの検証はね、あきらかに原因が予測できる場合はべつとして、たいていはまず仮説を立てるところから始めるんだ。それからアタリをつけた個所に印を埋めてデータ採取を行う。そしてその仮説が正しいか検証する。それを繰り返しながら徐々に原因箇所を特定していくんだ」

「気が遠くなりそうだけど、対策はあるのォ?」

「プログラムの検証ができればパッチを当てることもできるかなって」

「無理やり書き換えちゃうわけだ。だけど最長でも残り4日しかないよゥ?」

「暇つぶしだと思って試してみるさ。もし設計者の名前がわかったら教えてくれ」

「アイサー」

 話が途切れ、ユースケは扉がある面の壁を調べ終えた。特に異変は認められない。次に隣の面を探りはじめる。

「変と言えば、もうひとつ」ユースケは後方を気にした。

 視線の先にはリンがいる。彼女は四つん這いになってフロアを凝視していた。

「リンちゃんもユニークだよねェ」

「否定はしないけど。それよりもこっち」ユースケは、ジャケットの胸元にあるポケットを指した。そこにはマリィが収められている。

「はァ? 惚気のろけなら聞きませんよォ?」

「言わねェよ……でも、とてもリンにはきけないしなァ。気になるんだよなァ」

「もしかしてマリィちゃんよりリンちゃんの方が気になるのォ? うわァ、これって三角関数ってやつ?」

「三角関係な。あんまりしつこいとミュートに切り替えるぞ」

 ユースケはアリアのうなじをつかんだ。首元に音声出力を調節する機能がついている。アリアはくすぐったがり「にゃァ」と猫なで声を出した。

「やめて。許してにゃァ」

「語尾を変えるな」

 ユースケはアリアを解放した。

「どうしたんだ? 今日はなんだか変だぞ」

「ユースケだっていつもと違うにゃァ」

「語尾を戻せって」

 今度はアリアの喉元を撫でてやる。しかしそこに音声機能は付いていない。ユースケは神妙な面持ちになった。

「ボクも変かな?」

「いつもと違うよゥ。人前だから張り切ってる感じ? もしかしてええカッコしィなの?」

「普段のボクってどんな感じかな?」

「部屋ではいつも全裸待機してるじゃない」

「ひとを裸族みたいに言うな。パンツくらい履いとるわ!」

 ユースケの大声に反応してリンが振り返る。

「どうしました? なにか見つかったんですか?」

「あ、いや。気にしないで」

「食い物見つけたらすぐに教えろよなァ。独り占めすんなよ」遠くからマキオも叫んだ。

「ちゃんと報せますって」

 ユースケは再び壁に手をあて、ふたりに背を向ける。そこは相変わらず滑らかな平面が続いているだけだ。

 冗談はともかくさ、とアリアは指で壁をなぞりながら言った。

「ユースケってば、普段はあんまり喋ってくれないじゃない。もっとかまってくれてもいいんじゃないかなァ、とアリアさんは思うわけなんですよゥ」

「必要なことは伝えてるつもりだけど」

「そうだけどォ……そうじゃなくてさァ。もっとこう『アリアは可愛いねェ』とか『アリアは気が利くねェ』とか言ってほしいんだよゥ」

「アリアは便利だねェ、とか?」

「それじゃ都合のいい女みたいじゃないかよゥ。わかんないかなァ? 会話が機械的なんだよゥ。ロボットじゃないんだからさ、もっと気持ちをこめて言葉にしてほしいんだよゥ」

「気持ちったって、アリアはスレイブだ……あ――」

 瞬間。ユースケはアリアの機微に気がついた。

 その顔を直視できずに目をそらす。

「ゴメン……」

「べつにいいし。ユースケの方がよっぽど機械みたいだし」

「そうかな?」

「自分で気がつかない?」

「自分を客観的に評価するのって難しいんだ」

「ワタシがいるじゃない。もうすぐお別れかもしれないんだしさ。言っておきたい事とかないの?」

「うーんと、そうか……。今日で消えちゃうかもしれないんだよなァ」ユースケは、しばし手を止めて考える。「そうだ、ひとつだけ確かめておきたい事があるんだけど」

「ほらほら、あるじゃないかよゥ」アリアは声を弾ませる。エプロンがふわりと舞った。「なんでも答えてあげちゃうよォ。これがラストチャンスだぞゥ」

「だけど真実を知るには勇気が必要なんだ」

「わかる。きっかけがないとなかなか踏み出せないよねェ。さァチャンス到来だぞゥ」

「それじゃあアリア。消える前にひとつだけ、キミの本心を教えてくれないか?」

「うわァ、なになにィ? ドキドキするよゥ」

 ユースケは精悍な眼差しでアリアを見つめる。それから彼女の体を引き寄せる。

 アリアとふたり、息がかかる距離まで近づいた。

「人間って色んな香りがするものなんだね」

「知らなかった?」

「他人と接触するのは久しぶりだから」

「だから?」

 ユースケは意を決する。自分の腕を顔にを近づけ、それから鼻を鳴らした。

「ボクもにおうかな?」

「……え?」

「いやッ、答えにくいかもしれないけどこの際遠慮しないで。正直に答えて欲しいんだ。自分じゃどうにもわからなくて……どう? 臭う?」

 ユースケは答えを待つが、しかしそれは一向に返ってこない。アリアは沈黙を続けた。

「それはイエスという意思表示だね?」

「なんでそうなるの?」

「人間っていう生き物は自然とネガティブな方に考えが向くようにできてるんだ。危機回避能力が本能的に備わってるんだね」

「そうじゃなくてェ。確認したい事って、まさかそれなのォ?」

「え? そうだけど?」

 それを聞いて、アリアは頭を抱えて身もだえた。ユースケは心配そうにその顔をのぞき込む。

「どうした、どこか故障か?」

「……大丈夫。みんなどこか壊れてるものなんでしょう?」

「そうだね。そうかもしれない」

「それより、正直に答えていいんだね?」

「教えてくれ」

「ずっと黙っていてごめんなさい」

「謝る事じゃないよ。ボクの方こそ気づかなくて悪かったと思ってる」

「それじゃあ言うよ」

「覚悟はできてる」

 アリアは一度視線を逸らし、一呼吸置いてユースケと向き合った。

「ユースケ、ワタシね……」

「うん」

嗅覚がないからわかりませんよゥだ!

 アリアはそう言ってユースケを突き飛ばした。側面の壁に向かって宙を舞う。そして、そのままの勢いで激突――

 しなかった。

 正午を過ぎた頃だった。

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