☞こんな読者・作者におすすめ
- 西尾維新作品のファン
- ロリコン
- 小説家を目指すワナビ
- 個性的なキャラクターをつくりたい作者
- 日常系のミステリーを書きたい作者
あらすじ
悪いがこの本に
粗筋なんてない。
これは小説では
ないからだ。だから起承転結やサプライズ、気の利いた
落ちを求められても、きっとその期待には応えられない。
これは昔の話であり、過去の話であり、終わった話だ。
記憶もあやふやな10年前の話であり、どんな未来にも
繋がっていない。いずれにしても娯楽としてはお勧め
できないわけだが、ただしそれでも、ひとつだけ言えるこ
とがある。ボクはこの本を書くのに、10年かかった。
「少女」と「僕」の
不十分な無関係。
出典:少女不十分 著:西尾維新 出版:講談社
西尾維新の原体験か
10年越しの作品
少女不十分は、速筆で知られる西尾維新先生が、出版まで10年かかった作品です。

10年かかったって・・・どれだけ大長編なんだろう(;゚Д゚)

執筆そのものに10年費やしたわけじゃないわよ(;^ω^)
本作は、デビュー10周年を記念して刊行された作品です。つまり、10年作品を出し続けたご褒美(?)として出版させてもらった、というのが真実に近いと思われます。
その内容は、西尾維新先生の小説家としての方向性を決定づけ、異色の存在を放つ個性を持つに至った事件・原体験のような事件が綴られています。
事件は、ほんとうに起きたのかもしれませんし、フィクションなのかもしれません。少なくとも本作に近い出来事を経験し、それを脚色しているのではないか、と想像します。

西尾先生の身に何が起きたんだろう?
奇妙な少女との出会い
物語は、小説家になりたい一人の青年が、ある少女・Uと出会うところから始まります。
Uはお友達といっしょに歩いているのですが、お友達が目の前でトラックに轢かれて死んでしまったにもかかわらず、手にしていたゲームをきちんとセーブしてからお友達に駆け寄って泣いたのです。
この奇怪な行動を取るUを目撃した青年は一目散にその場を去りますが、見たことを見られていたのです。

そして事件に巻き込まれ、少女の不十分さを知ることになるの。
なぜUはお友達よりもゲームのセーブを優先させたのか。
それはあまりにもありふれた理由であり、あまりにもあり得ない現実でもあります。

まさに『事実は小説よりも奇なり』だね。
西尾維新が10年間書き続けたテーマ
奇妙な行動を取るUのバックグラウンドを知り、お話を聞かせてほしいと頼まれた西尾先生は、Uとの体験を踏まえ、次々と物語を作っては聞かせます。
そのすべてに含まれているテーマはただひとつ。
どんなひとでも幸せになっちゃいけないなんてことはない。
西尾先生の作品に登場するキャラクターは誰もかれもが突拍子もない行動を取ります。
本作のキーマンであるUも同じです。
しかし、一見あり得ないようなキャラクターですが、Uなりの理屈・行動原理が伴っています。
それは一般的には受け入れられるものではないでしょうが、説得力があるから困ってしまいます。
これはつまり、誰の身にも起きる可能性があることを示しているからでしょう。
Uという奇妙な少女が作られ、お友達よりもゲームのセーブを優先させた原因は、彼女の置かれた境遇が主な原因であり、それは社会的な問題であり、個人の性質とは無関係なのです。
人間は社会的な生き物であり、他者との関係性のなかで人は成長していきます。
その過程で人格の形成に失敗するケースもあるでしょう。
西尾維新作品は、社会のレールからはみ出してしまった人たちにスポットライトを当て、それでも『幸せになっちゃいけないってほどじゃないんだよ』というメッセージが込めているのです。

ボクたちみたいな変わった生き物でも幸せになって良いんだね(∩´∀`)∩

西尾先生の世界観はマイノリティにやさしいんだ。

でもロリコンに権利はないから、自分の幸せのために、その欲求を満たそうとはしないでね(*´ω`*)ニッコリ
まとめ
本作は、正解の無い世の中で正しさを求められる窮屈さを、少女という弱い立場の人物を観察するように描かれています。
べき論が横行する世の中で、正しくなくても幸せになっていいと言われれば救われる思いがするでしょう。

西尾維新先生の10年分の想いが詰め込まれた一作です。西尾維新の世界観を味わいたいなら、まずはこの『少女不十分』をおすすめします!
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