自動運転のエンジニアになった話【約1,900文字】

オリジナル小説

自動運転のエンジニアになった話

「留年した」

 大学生活2年目に突入したタイミングでオレは家族にそう打ち明けた。

 日本の最高学府を目指していたオレは、中学・高校とずっと勉強ばかりの日々を送っていた。だが努力は実らず、とりあえず行ける範囲で知名度の高い大学に通っていたのだが……。

 専攻は情報工学でプログラミングを学んでいる。

 だけどオレは興味がなかった。持つことができなかった。「コンピュータと対話して何がおもしろいんだ?」と、そう思っていた。おまけにまわりはオレよりずっと勉強ができるヤツばかりだし、そのくせ女子はいないわで最悪だった。

 そんなオレの興味は『ファッション』だった。

 大学は田舎にありその近くで一人暮らしをしていたのだが、都心まで通いショッピングモールのアパレルショップでアルバイトをしていた。ここではイケイケのファッションリーダーややイケメンフリータやら、いろんな人と関わることができた。ますます大学から足が遠退いていった。

 授業は欠席し、出席しても携帯で最近流行りのファッションチェック。真剣に講義を聞くことはなかった。同類を見つけ、だらだらと過ごし、あとはアルバイト。それが終わると大学に行くことなく街へと遊びに出かける。そんな自堕落な日々を送っていた。

 ※

 ある日、高校からの友人と連絡をしているときにおすすめの映画を教えてもらった。シリーズもののカーアクションだ。オレはこれにハマり1週間ですべて観た。その影響で車好きへと転身し、大学に自動車部があると知るやすぐさま入部した。

 そこでは部員たちが各自の愛車を整備していた。どれもスポーツカーだ。

 早く走るにはどう改造すべきか、見た目をもっとカッコよくするためにはどうウイングを設置すべきかなど、当時『遊び』と『ファッション』しか興味のなかったオレに『』が追加された瞬間だった。

 そのことを親父に話すとスポーツカーを買ってくれた。オレは愛車にとことん手を加えた。スマホと車をつなげて音楽再生できるようにしたり、車高を下げてかっこよく見せたりと、自動車部のヤツらすごしながら車の知識をどんどん吸収していく。そのなかで自動車業界の最新の動向に触れる機会があった。目的地を教えると自動で連れていってくれる車があるのだと。

 ※

 ある日、いわゆる『いつメン』4人を集めて大学の近くの田舎の居酒屋で飲み会をしていた。だが、田舎は交通の便が悪い。終電が早く、かつみんな家が遠い。都心で飲むより解散する時間が早くなる。日を跨ぐ前には帰らないといけなかった。

 この日も例によって22時過ぎには解散となった。これがとてもフラストレーションがたまる。もっとみんなと一緒にいたい。オレは友人たちと『あーでもないこーでもない』と語る時間が何より大好きだった。とくにこの『いつメン』は都心と大学で見つけた気の合う友人たちをくっつけてできたメンバーだったのでなおさらだ。

 オレはその場の勢いでこう宣言した。

「みんなが酒を飲んだ後でも、車で帰れればもっと一緒にいられる! 俺はエンジニアになって、飲んでいても乗って帰れるような自動運転車を作る!!」

 そんな不純な動機で『自動運転』にのめり込むようになった。図書館に通い、自動運転についてさらに調べるようになった。するとなんと、それはオレの大嫌いなプログラミングで作られているではないか! 

「自動運転もプログラムで動いているのか……」

 オレは衝撃を受けた。

 そこから猛勉強の日々が始まった。

 まず、サボっていた講義を一番前の席で受けるようになった。真剣に聞くと、車体の制御方法やロボットのプログラム方法など、自動運転と密接に繋がっていることがわかった。

 また、自分でアプリを作ったり、他の学科で自動運転に役立ちそうな授業があれば教授に直談して受けてみたりと、とにかく遅れた分を巻き返そうと一生懸命取り組んだ。自分の夢の実現に必要な知識と経験が大学にゴロゴロと転がっていたのだ。

 ※

 就職活動の時期を迎えた。

 留年という不利な条件を抱えつつも、絶対に自動運転に関われる会社に入ると誓っていた。そして面接で自分の想いを正直に話し、内定をもらうことができた。

 会社に入っても配属が自動運転の部署になるかはわからなかったが、幸運にも希望する自動運転の部署に入れてもらえた。『自動運転エンジニアになる』という夢が叶った瞬間だった。

 そしてオレは今、『大好きな仲間や友人たちとすこしでも長く一緒に過ごす』という夢を叶えるために日々奮闘している。

 自動運転が普及すれば、車はもっと仲間との時間を共有できる空間になる。

 まだ一般には普及していないが、それを叶えるのがオレの仕事だ。

 たくさんの人が大切な人と一緒に豊かな時間を過ごせるように。

 みなさんの『仲間との大切な時間の創出』という夢が実現するように。

デコ
デコ

 自動運転はあくまで手段。本当の目的は仲間との時間っていうところが良いね(・∀・)

遊び心
遊び心

 三河乃風さんの夢が叶えばたくさんの人が幸せになれそうですね☆

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