書けそうで書けない西尾維新ワールド

西尾維新先生は2002年に『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』で、第23回メフィスト賞を受賞しデビューしたミステリー小説家? です。
ミステリー小説でデビューした西尾先生ですが、その作風は既存のミステリーの枠から逸脱した作品で、ほとんどがライトノベルテイストとなっています。
その作風は類を見ず、キャラクター名はおよそ人名とは思えないネーミングですし、ギャグは言葉遊びが多く、表現や言い回しも独特のテンポで進んでいきます。ゲーム感覚的で、マンガのような軽いノリで人がかんたんにサクサク死んでいきます。
若い世代から絶大な人気を誇っていますが、しかし内容が薄っぺらいかというとそうでもなく、トリックや世界観は本格的で大人でも満足できる作品が多いです。

読みやすくてボクは好きだよ♪
そんな西尾維新先生の作品のなかでも、ボクが読んだ中でおもしろいと思った小説ベスト3を挙げてみましたので参考にしてください。
第3位
クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い

それまで読書をまったくしてこなったボクに活字を読むきっかけをくれた一作です。
ボクは10代の頃は、小説はおろか新聞も他の書籍も、活字に触れることはほとんどありませんでした。マンガやテレビの方がおもしろい。文字を読むなんて退屈でつまらないと思っていたのです。
そんなボクを年に100作近く読む(※その当時の話)人間に変貌させたのが本作になります。
きっかけは知人にすすめられたためです。
最初は仕方なく読み始めたのですが、これが見事にはまってしまいました(笑)
軽いテンポで内容は固くなく、トリックはしっかりしていて複層的に行われる謎解きに驚かされ、そして後読感が良かったのです。おおげさなヒーローではなく、脛に傷を抱えているような等身大のキャラクターが生き生きと動き回り、当時ライトノベルという概念自体知らなかったボクの目にはものすごく新鮮に映りました。ああ――
小説ってこんなに面白いものだったのか、と。
読書嫌いの方はぜひこの作品から読み始めてほしいです。

きっと新たな読書体験が生まれるはずよ。
第2位
ダブルダウン勘繰郎

本作は、清涼院流水先生の作品に登場する設定、JDC(Japan Detectives Club:日本探偵倶楽部)を用いたトリビュートで中編小説2作の短編集のうちの1本になります。
探偵を目指す者がひとつの目標とするのがJDCで、超一流の探偵しか所属できないその組織に入るため勘繰郎は試験を受けさせられることになります。
能力はあるけれど、性格に難がある勘繰郎。
出された試験は探偵らしく謎を解かなければならないわけですが、果たしてその結果はいかに――
勘繰郎は、さしずめ無頼を気取るダークヒーローといった感じでしょうか。ルパン三世やシティハンターの冴羽獠などをイメージしていただけるとわかりやすいかと(古い?)。西尾先生の別作品では球磨川禊(めだかボックス)なども同種のキャラクターといえるでしょう。
元々アウトローなキャラクターが多い西尾作品ですが、勘繰郎の生き方や価値観は、現代の多くの日本人にとって羨ましく映るのではないでしょうか。

ボクは、正統派の主人公よりも日陰者に共感します。
ちなみに短編集のもう一作であるトリプルプレイ助悪郎の主人公である刑部山茶花は泥棒ですが、こちらはダークヒーローではなくトリックスターといった方が良いでしょう。
謎を重ねまくって奇を衒うことを堂々と行っているミステリーです。謎解きを楽しみたい方にはこちらをおすすめします。

※ただし、本格ミステリー好きの方は怒りだす内容かもしれません💦
第1位
少女不十分

速筆で知られる西尾先生が書くのに10年かかったという作品です。
実際には、執筆にかかった時間が10年というわけではなく、出版できるタイミングに10年かかったというのが本当のところでしょう。

10年待ってでも出したかった作品なのかな?
本作では、西尾先生の世界観を決定づけた事件が起きます。
西尾先生が学生だった頃、作家を目指しつつも思うような結果が出ずに悩んでいた時のことです。
そんなとき、道端である少女・Uを見かけます。Uは、一緒に歩いていたお友達が目の前で車に轢かれてバラバラになったのを目撃したにもかかわらず、まず手にしていたゲームをきちんとセーブしてから死んだ少女の元に駆け寄り泣いたのです。

ちょっと常識では考えられない行動ですよね(´・ω・`)
その奇怪な行動を目にした西尾先生は一目散にその場を離れるわけですが、しかしUは目撃されていたことを目撃していたのです。
ここからUとの不思議な関係が始まります。

そして、少女Uの行動原理が明らかになると、それまでのUへの評価が一変します。
実際に起きた事件なのかは定かではありませんが、この一件を境に西尾先生は自身の作風が出来上がり、現在に至っているわけです。その原体験を知ることは、西尾先生の作品すべてに通じると言っても差し支えありません。西尾作品のファンであればぜひとも読んでおきたい作品です。
総評

化物語シリーズはランクインしていないのね。

一番のヒットシリーズではあるんだろうけど、あえてボクたちが紹介しなくてもみんな読んでいるかなと思い、外しました。
――というのは建前で、じつは化物語シリーズは読んでいないため、ちゃんと内容を把握していないのです(アニメは初期の数話を視聴してはいますが)。
おもしろいのだろうなと想像はできるのですが、あまりに人気化していたため何となく避けたまま、まあ読まなくてもいいかという域に達してしまいました。

なんとなく知っている気になっちゃうくらい有名だよね(笑)
個人的には戯言シリーズや世界シリーズのようなデビュー初期の作品が尖っていておもしろいなと感じています。
どの作品を取ってもキャラクターが異常なほどに個性的ですし、奇妙な名前で二度と忘れなさそうだけど思い出せない、誰でも書けそうなくだらなさもあるけれど、だれにも書けない妙にクセになる西尾維新先生の作品群にあって、今回紹介した作品に登場するキャラクターは特に異彩を放っていると感じます。

未読の作品があればぜひ読んでみてください。
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