【オリジナル小説】絆マリオネット【第8話】

絆マリオネット オリジナル小説

第8話 交渉

 銀葉アカシアは、割れた人垣から連れを伴っていかにも『我こそは上流階級様であるぞ』といった態度で歩いてくる。背が高く、がっちりとした肩をいからせているのが勇ましい。

 歳はご主人様より若く見えるがしかし、実はこの男――100歳をとっくに過ぎている。

 平均寿命が延びつつある昨今、インフレ気味の数字にもはや意味なんてないのだが。彼の場合、老人と呼ぶには見た目が少々派手すぎる。

 テイルコートを羽織ってはいるが、その全身がオートメイル化されており、宝飾品でデコレーションしているのがいかにも成金といった風情である。豊かな黒髪や髭も植毛だろうし、きっと躰の内側も脳髄以外はほとんどが機械化されているに違いない。

 もちろん、誰にでもできることではない。

 貧しい者に躰を改造する余裕なんてないのだ。

 だから、ひと目で上流階級様とわかる銀葉のお出ましに、周囲が口々にその名を呼んでざわついた。

 銀葉は、腕に止まった鴉を愛で、それから反対の手に持っていた杖の先をフロアに突き立てる。カツ――ンと甲高い音が鳴り響いた。見た目はともかく、筋力や視力の衰えは否めないのかもしれない。顎をしゃくり、眼を細めて下々の者を見下していく。

 居合わせた者たちは、触らぬ神に祟りなしとばかりに沈黙した。いつの間にか周りを囲む人垣はなくなっている。行き交う誰もが一歩退き、遠目に様子を窺っているだけだった。

 柊も委縮したようにかしこまる。

「銀葉様、なぜこのようなところに?」

「なに、吉野お嬢様の姿が見えなくなったうえ、軍の狗まで慌てた様子で消えてしまったんじゃあ、なにか良くないことでも起きたのだろうと推測したまでだ。いぬだけでは不安だから鴉を飛ばしてみれば案の定ではないか」

「では、そのギアは銀葉様の?」

「マリオネットごときに、危うく破壊されてしまうところだったな」

 銀葉は、腕に止まる鴉を撫で、それからこちらへ歩み寄ってくる。その瞳を光らせ、私たちに退くよう無言で圧力をかけた。

 柊は小さく悲鳴をあげると、盾を前面に押し出してすっぽりと躰を隠してしまった。いざとなったら命に代えても――などと虚勢を張ってみても、いざ人間に命令されてしまえばこの有様だ。

 そういう私も例外ではない。ご主人様の命令以外は受け付ける道理などないのだが、しかし人間に手を出せないのは同様である。

 マリオネットには人間に危害を加えられないよう安全設計が施されているのだ。

 銀葉は私の前を過ぎ、怯えて座り込む染井の前に立った。

 のばした髭をしきりにさすりながら入れ歯を剥き出しにして嗤う。品のない、とてもいやらしい声だ。

「これはこれは、染井お嬢様。こんなところにいらっしゃったのですね。ずいぶん探しましたよ。その恰好はどうされたのです? 女中のエプロンなど身に着けて。仮装パーティーがご希望でしたらそうおっしゃっていただければよかったのに」

「そういうわけでは……」

「では、どういうわけなのです?」

 銀葉は片膝をつき、口ごもって視線を逸らす染井の顔を覗き込んだ。しかしそれ以上追及することはなく、胸元の内ポケットから懐中時計を取り出し、時計の針を追った。

「まあ良いでしょう。続きはのちほどゆっくりと伺うとしましょうか。それよりもいまは時間が惜しい。そのままの衣装で構いませんから、一緒におこし願えますか?」

「そんな……恥をかかせないでください」

「恥をかかされたのは私のほうですよ。大丈夫、お嬢様がお召しになればなんだって似合います。いかにも名ばかりで、落ちぶれた斜陽族といったおもむきがあってね」

 そう言って引きつったような笑い声をあげる。耳障りな周波数だ。

 ご主人様や師匠が同様の台詞を彼女に贈ったが、語る人物が違うだけでこうも印象が異なるものなのか。

 銀葉はおもむろに手袋を外す。

 その腕はやはり生身ではない。鋼鉄でできたオートメイルだ。先の大戦で肉体を失ったとは考えにくい。おそらく彼が持つ技術を誇示するためだろう。機械仕掛けの指をのばし、染井の頬に這わせていく。

「触らないでください。こんな衆目の中で乱暴を働けば銀葉様といえどもただでは済みませんよ!」

「もちろん、ただで済ませるつもりはありません。いくらでも金を積む用意はできておりますとも。私はね、このリュウキュウの地を丸ごと買い取るつもりでいるのですからね。たかだが数百人、買収するのは容易いことです」

「お金で人の心まで買うことはできません」

「そんなことはありませんよ。この世に金で買えないものなどないのですから。物も土地も、地位も名誉も、マリオネットや人の心さえもね」銀葉は染井の腕をつかんだ。「さあ、この後の予定がおしております。手をお貸ししますから、どうぞお立ちください」

「予定って……いったい?」

「私たちの婚約を正式にお披露目するのですよ」

「そんな――離してください。わたくしはそのような約束を交わした憶えはありません!」

「お嬢様にはまだ伝えておりませんでしたがね。しかしこれは決定済みのことなのです。なにせ、お嬢様のお父上である藤野様が認めてくださっているのですからね」

「なにかの間違いです。お父様がそのようなこと許すはずがありませんわ!」

「ならばお会いして確かめてみるといい。だがお父上の方は、保身のために娘を売ったのですから、合わせる顔なんてないでしょうがね」

「ああ、どうしてこんなことに……」

「あなたも染井家の後継者、家の台所がどうなっているかくらいご存知でしょう?」

「家がどうとか、わたくしには関係ないことです」

「お嬢様がそう思っていても、藤野様にとっては死活問題なのでしょう。それともお嬢様はお父上がどうなろうと知ったことではないと、こうおっしゃるのですかな?」

 父親の名を出され、染井は悔しそうに唇を噛んで震えた。

 染井藤野といえば染井家の現当主である公爵様だが、病に伏せているのか、或いは寄る年波には勝てないのか……、公に姿を見せなくなって久しい。オートメイルに頼ればまた元気な姿を取り戻せるのだろうが、どうもそれができない経済事情に陥っているようだ。

 彼女は必死に抗っているが成す術がない。

 狼狽えてばかりの柊をしり目に、強引に立たされてしまった。

 銀葉のその態度には女性に対する配慮も礼節も感じられない。野蛮な本性を剥きだしにしているようだった。

「お嬢様さえ素直に従っていただければ、みんな幸せになれるのですよ?」

「そうでしょうか? たとえそうだとしても、私は銀葉様の力を借りるつもりはありません。お父様は私が自分の力で支えてみせます」

「ほほう、それは頼もしい限りですな。ですがいったいどうやって?」

「この髪を売ってでも」

「髪を売る? 髪を売るですって?」

 銀葉は目を丸くして彼女の言葉を繰り返した。

 それから腹を抱えて笑い出す。

「なにがおかしいのです!」

「いや、これは失礼。なんのジョークかと思いまして」

「私は本気です」

「これだから世間知らずのお嬢様は。そんなものがいくらになりましょう。それじゃ靴紐だって買えやしない。どうせ売るなら、私が言い値でまるごと買って差しあげましょう。あなた様も、公爵家も、すべてね」

 銀葉は毒を持った爬虫類のような禍々しい形相をみせる。青ざめた染井は銀葉の手を振りほどくとその場で蹲った。

「嫌です。わたくしは参りません!」

「おやおや、困ったお嬢様だ。そんなふうに駄々をこねるものではありませんよ。これでも気の長い方ですが、時間にルーズな人間は好きになれないんです。あまり暴力は振るいたくないのですが、仕方がありません――ねッ!」

 銀葉は手にしていた杖を振り下ろす。

 染井は小さく悲鳴をあげるのを見て、私は反射的に暴君の前へと身を躍らせた。相手が誰であろうと関係ない。手は出せなくとも盾になることくらいはできる。

 だが、手を伸ばし、杖に打ち据えられようかという寸前、私よりも一瞬早く、その悪意を阻む人物が現れた。

 ご主人様だ。

 後ろから銀葉の腕をつかむとひねりあげる。

 銀葉はうめき声をあげて杖を落とした。

「貴様、なにをする。私が誰だか知っての狼藉か!」

「どうでしょう? ご婦人に手をあげるような粗忽者とくらいしか」

「離せ!」

 痛みと怒りで声を荒げる銀葉に対し、ご主人様は涼しげな顔でその命令に従う。

 銀葉を解放すると同時に、彼の取り巻き連中に囲まれてしまった。

 柊とは違い、おそらく銀葉家専属のガーディアンだろう。

 大仰な甲冑を身に纏い、見たこともないアチーブメントをその胸当てに刻んでいた。すでに貴族の仲間入りを果たしているつもりなのかもしれない。

「貧民層の分際で、こんなことをしてただで済むと思うなよ!」

 銀葉が指を鳴らすと、ガーディアンがご主人様の両隣を挟むようにして立つ。真鍮で装飾された長棒を彼の喉元に突きつけた。

 私はそれを咎めようと拳をかためる。

 相手が機械ならいくらでも攻撃可能だ。屈強なガーディアンといえど、しょせんは木偶人形である。主の命令がなければ動けやしないのだ。

 銀葉が命令をくだす前に彼らめがけて正拳突きを繰り出した。

 だがその拳が一体のガーディアンに突き刺さろうかという直前――

 ご主人様が片手をこちらに向けて広げた。

「勿忘草、やめなさい」

「なぜ止めるのだ!」

「いいから、お前はさがっていなさい。大事な試合が控えているんだ。こんな所で問題を起こしちゃいけない」

 ご主人様は努めて冷静な口調を保ち、穏やかな表情で私をなだめる。

 しかし、彼にもしものことがあったら試合どころじゃない。動揺し、とても闘える精神状態ではなくなってしまうだろう。

 それでもご主人様ならば、独りでも出場するように言うのだろうが、ご主人様がついていてくれるからこそ、私の精神を司るキズナは安定し、全力を発揮することができるのだ。

 彼の意志に背くことになるが、やはり助けたほうがいいのではないか。命令されたわけではないのだ。

 いっそどちらでもいいから命令してくれればと思う。

 彼の身を案じ、攻撃するべきか退くべきか逡巡していると、師匠が頭上から囁いた。

「水仙殿なら心配いらん。言うとおりにするのだ」

「だが、ご主人様が……」

「頭を冷やせ。あやつがなんの策もなく無謀な行動を取るはずがなかろう。それともお主は自分の主人が信じられんのか?」

「……わかった」

 振り上げた拳を収める。そこでガーディアンに拘束された。

 ご主人様と並び拘束されると、銀葉が前に立つ。

 銀葉はご主人様を視認すると顔を歪めた。顎をしゃくりあげ、鼻を鳴らす。それから軽蔑の眼差しで見下した。

「ふん。誰かと思えば浅黄殿ではないか」

「どこかでお会いしましたか?」

「白々しいですな。昨年度のクイーン決勝戦で相対したであろう」

「闘ったのはラフレシアと勿忘草ですよ。あなたはセコンドにさえいなかった」

「ラフレシアは自律しているからな、わざわざそばについている必要はない。物理的な距離など関係しないさ」

「たしかに。ですが、主に恵まれてさえいれば女王の座はさらに盤石となるでしょうに……」

 そう。こやつの人となりからして信じがたいのだが、銀葉アカシアはラフレシアの主なのである。

 何故ラフレシアほどの使い手がこんな下衆げすの許にいるのだろう、私にはそれが理解できない。自律しているとはいえ、彼女にだってキズナは機能しているはずなのだ。結ばれた主からの影響は少なからず受けるはずなのに、それをまるで感じさせない気高さを持っている。

「含みのある物言いだな」

「他意はありません。ただ、今年は勿忘草が勝つというだけのことです」

「そこにいるのは勿忘草か?」

 品性の欠片もない視線を受け止め、私は自らフードを取る。

「相変わらず目つきの悪い女だな」

「貴様に言われたくない」

「またやられに来たのか、懲りないヤツだ」

「去年は世話になったが、今年の私は一味違うぞ。できれば貴様から張り倒してやりたいところだが、今はまだ我慢しておいてやる」

「ふん、口も悪いな。主人のしつけが行き届いていない証拠だ」

「貴様、ご主人様の悪口は許さんぞ!」

 私は一歩にじり寄る。しかしご主人様に挑発にのるなと窘められ、ぐっとこらえた。

 手出しできないことを良いことに、銀葉はその態度を増長させる。

「それはそうと貴様、さっきはよくも私の可愛い鴉を壊そうとしてくれたな」

「そのギアは染井を襲ったのだ。人に危害を加えれば処分もやむを得ないだろう」

「人間であればな」

「どういうことだ、染井は人間だろう?」

 私は視線を切らさぬよう注意しながら背後で蹲っている染井を観察した。しかしご主人様と同様に、彼女も蒸気機関どころか歯車ひとつついてない。胸部に穴があるか確認しなければ本当のところはわからないが、よもやマリオネットではあるまい。どう見ても若い人間の女性だった。

 訝しむ私をみて、銀葉が鼻でわらった。

「しょせんは木偶人形。人間社会の仕組みなどわかるまい」

 そう吐き捨てると、踵を返すや鋼鉄でできた手で染井の髪を鷲掴みにした。

「こちらにいらっしゃるお嬢様にはな、すでに値札が貼られているのだよ。マリオネットのようにね」

 染井が悲鳴をあげ、柊が必死に袖にすがる。

 それでも銀葉は手を離さなかった。乱暴に振りかざし、抜け落ちた髪がはらりと床に落ちる。

「やめろ! 女にとって髪がどれほど大事なものか、貴様にはわからんのか!」

「金に換えられる程度のものさ」

「今すぐその手を離せ!」

「嫌なら力尽くでもやめさせればいい。もっともマリオネットが人間に刃向えばどうなるかくらい知っているだろうがな」

「貴様――」

 私はいよいよ自制が利かなくなる。染井は好きではないが、この下衆ははっきりと嫌いだ。体温の上昇とともに蒸気が沸々と音を立てる。ガーディアンを振り切ろうと裸足のままの両足に力を込めた。

「勿忘草!」ご主人様が怒鳴った。

「とめてくれるな、ご主人様よ」

「どうしても彼を殴りたいなら、まず俺を殺しなさい」

「――な?」

「どうした。さあ早く」

「そんなことできるわけがなかろう」

「できるさ。俺も彼と同じ人間なんだ」

「本気で言っているのか?」

「俺が嘘をついたことがあるか?」

 ない。

 私が知る限りにおいてご主人様が嘘を吐いたことなんて一度もない。今も嘘をついているようにはみえなかった。平然とした顔で自分を殺せと言っている。そこまで躰をはられては矛を収めざるを得ない。

 銀葉もさすがに呆れたと言わんばかりに顔をしかめている。毒気が抜けたように肩を落とし、染井の髪から手を離した。

「相変わらず甘い男だな、水仙殿は。何故こいつに助けさせない? ここでスクラップにしたところで、貴殿ほどの腕があれば、代わりのマリオネットなどいくらでも創れるだろうに」

「この子は特別でしてね。この先どんなに技術が発達しても二度と再現できないでしょう。絶対に失いたくないんですよ」

「私にはとてもそこまでとは思えないが……。たとえそうだとしても、命を懸けるほどのものか?」

「この命に免じて、染井様も自由にしてあげてくれませんか?」

「それとこれとは話が別だ。第一、実際に命を投げ売ったわけではないだろう」

 ご主人様はわずかに口角をあげ、それから人差し指を立てた。

「では、ひとつこの命を賭けて勝負をしませんか?」

「勝負か。それはどんな?」

「簡単です。この度のサーカスで勿忘草が優勝すれば染井様とのご婚約を破棄していただく」

「もし勿忘草が負けたら?」

「この命、煮るなり焼くなりご自由に」

「――なッ!?」私は驚いた。

 いくら衆目の集まるなかとはいえ、ただのマイクパフォーマンスではすまない。

「それは面白い」銀葉はシニカルに嗤う。

「では――」

「面白いが、割に合わないな。私には貴殿の命を奪ったところでなにも得るものがない。損をするのは嫌いなのだよ」

俺の命と交換にあるものを手にすることができます。それはどれほど金貨を積んだところで得られるものではないでしょう」

「ほう……、それはレア・ギアかなにかかね?」

「お耳を拝借願います」

 そう言ってご主人様は口許に手を添えた。

 怪訝そうにしながらも興味を惹かれたのか、銀葉は顔を寄せる。

 そしてご主人様は何かを耳打ちした。

 いったい何を話しているのだろう。

 内容を聞き取ることができなかったが、銀葉の態度があきらかに変わった。目を見開き、ご主人様の顔を凝視している。

「いかがです。悪い話ではないでしょう?」

「……たしかに。その話が真実であればだが」

「疑うのですか?」

「証拠がないではないか」

俺がこのキーワードを知っていることが証拠になるのでは?」

 銀葉はそこで黙り込んだ。顎髭をさすりながら眉間に皺を寄せている。そのまま暫く沈黙を続けていたが、やがて高笑いをあげて弛緩した。

「いいだろう。その提案、受け入れよう」

「約束しましたよ。ここにいる全員が証人です」

 見渡してみると、いつの間にか人だかりが数を増している。奥からフラッシュがたかれ、その隣にはジャーナリストらしき人物がタブレットを片手に録音しているようだった。

 吹き抜けの上階からは身なりの良い紳士淑女も双眼鏡片手にこちらの様子を窺っている。こちらも録画や配信機能を備えていることは間違いない。一連のやり取りはネットを介して瞬く間にリュウキュウ中へと拡散されるだろう。

「これでいくらあなたの権力が絶大といえど、そう簡単に反故することはできなくなりましたね」

「かまいませんよ。ラフレシアが負けるはずがありませんからね。水仙殿こそ、自ら退路を断って大丈夫でしたかな?」

「もちろんです。勿忘草こそが最強の女王にふさわしいのですから」

「たいした信頼ですな。それではこちらも準備を万全に整えておきましょう。断頭台などずいぶん使っておりませんし、お嬢様との披露宴に貴殿のような下民を招待しなければならないのですからね。上流階級者の皆様に失礼のないようお願いしますよ。まあもっともその時、水仙殿は首から下を失っているわけですが」

「お招きいただいて光栄ですが、その前に、決勝ではぜひリングへお越しください」

「それは遠慮させてもらおう。血なまぐさい場所は肌に合わなくてね」

 一致しない言動をみせつつ銀葉は指を鳴らす。

 ガーディアンに退くよう命令すると染井を一瞥し、それからコートを翻して螺旋階段を上っていく。

 肩越しにみえる鴉がガラス玉の眼球を光らせた。

 視線の先にはご主人様の後ろ姿がある。

 彼はいまどんな顔をしているのだろう。

 鴉はひと鳴きすると不協和音を響かせ、やがて甲高い周波数が耳の奥まで届いた。

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