専門学校時代、編集者を招いてのコンペ大会が開かれたときの話【約2,800文字】

ノウハウ

現役編集者さんが作品を見てくれる!?

 数年前の話なのですが、僕はライトノベルの専門学校に通ってました。

 アミューズメントメディア総合学院のノベルズ科なのですが、この学校には以下のような売りがありました。

 それは、電撃・富士見・МFなどのライトノベルレーベルから現役の編集者さんを学校に招き、学生たちの作品を見てもらうというものです。

 この時点で察した方もいるでしょう。

 そう。これは書籍化・作家デビューする絶好のチャンスです。

 マンガと違って小説は持ち込みがほぼほぼないので、編集さんの意見を貰えるだけでもありがたく、学生はみんな必死でした。もちろん僕もです。

 で、今回はその時の体験を話してみたいと思います。ですが、なんせ数年も前のことなんで、記憶があいまい、もしくは間違いもあるかもしれませんが、そこはご了承願います。それでも編集者さんと物書きがどんなやり取りをしているのか、ざっくりとでも雰囲気を伝えられるんじゃないか、と思っています。

超メジャーなライトノベルレーベルの編集者さんが来た!

 編集者さんが作品を見てくれる、といってもひと作品をフルで読んではくれません。理由はシンプルに、小説は一冊読むのに時間がかかるからです。

 ですので、冒頭の数ぺージとプロットだけを見てもらいます。プロットというのは言い換えると『企画書』ですね。

 みなさんご存じでしょうが念のため、プロットとは何かを説明しておきます。

 小説の企画書。僕が知っている形式をまとめると、以下の4つになります。

企画書の構成
  • 企画のコンセプト
  • 想定読者
  • ストーリー
  • キャラクター

 これらを短くまとめて書くわけです。

 企画のコンセプトは作品の面白さを1~3行のストーリーでまとめます

 例を挙げると、桃太郎は『桃から生まれた男が悪い鬼を退治する』ですね。ま、これだけでは面白さが伝わらないかもしれませんが、あくまで例ということで。

 想定読者は、どんな人に読んでもらうか。いわゆるペルソナというやつです。ストーリーはあらすじで、キャラクターは設定資料とかに書いてあるような人物紹介ですね。

 これらの要素を2・3ページにまとめる。これがプロット(小説の企画書)となるわけです。

 そんなプロットと冒頭の数ページを携え、僕ら専門学生は編集者さんに挑んだわけです。

 当日、僕らが教室に集められると、編集者さんは教壇に立っていました。出版社ごとに行われたので、現れた編集さんは一人です。

 ですが、その編集者さんは、なんとあの天下の電撃文庫の編集者さんでした!

 まぁ~緊張しましたよ。しかも編集さん(以下、編集M)、ちょっと怖いんですよ。時代だとも思いますし、忙しいから、わりかしピリついてました。

 ちなみに学生たちの噂では、名刺を貰えると成功となってました。編集さんが連絡先を知りたいということは、今後やり取りをしたい、ってことなので書籍化の可能性があるというわけですね。

辛辣な編集コメントの数々

 さて、おそらくみなさん気になるはずの編集Mさんからのコメントを書きましょう。僕が覚えているかぎり、コメントはかなりの辛口なので、その点はご覚悟を(笑)。

 まず、編集さんが「作品タイトルと名前」を言い(ちなみに編集さんは事前に、プロットと原稿の冒頭は読んでます)、指名された学生が「はい」と答えます。ほぼほぼ、授業で当てられたのと同じですね。で――

編集M
編集M

 キミの企画さ、無難すぎるよね~。

 いきなり、コレです。学生、シュンとなります。当たり前です。頭から全否定だし。

 しかも編集Mさん、これで止まりません。

編集M
編集M

 キャラもストーリーも普通だし、なんか工夫しないとさ。

学生
学生

 はい……

編集M
編集M

 たとえば、キャラだけでも良いから、なんかトガらせないと。特徴作ろう

学生
学生

 はい……

編集M
編集M

  はい、じゃぁ、頑張って。

 これで終わりです。

 いやいやいや。ウソでしょ。アイデアをくれることもなければ、フォローもなし? しかも、ちょっと面倒くさそうだし。

 そんな感じで一人目はあえなく討ち死しました。

 その後も討ち死には続きます。死屍累々です。編集さん、無双です。地獄です。そんな地獄を作り上げた編集さんの辛口コメントを抜粋します。

編集M
編集M

 推理モノなのに謎が弱いカタルシスや納得感がないよね。

編集M
編集M

  この企画内容でこのボリュームの世界設定は要らなくない? 内容的にラブコメ寄りだから、素直にモテようよ 。

編集M
編集M

 企画内容と想定読者がズレてない? 中高生には、難しすぎるよ。

編集M
編集M

 キャラの魅力が弱いかな~印象に残らないんだよね、企画書読んでて。

編集M
編集M

  文章が下手なにが言いたいのかよく分からなかったんだよね。

 ……とまぁ、かなりの辛辣ぶりです。編集さんによって感想は違うかもしれませんけど。

小説家になるために一番必要なことはコレ!

 それでも、メンタルがタフな学生は編集Mさんに色々質問していましたね。

 その会話のなかで編集さんがよく言っていたセリフは、

キミはけっきょく、何をやりたいの?

 でした。

 その一言だけでは分かりづらいかとも思いますので、僕なりに解釈すると、

どんな面白さを、どんなキャラやストーリー、あるいは設定で、読者に伝えるの?

 なのかな、と。

 まず伝えたい面白さが明確じゃない、という指摘が多かったのかな、と僕は思った次第です。

 ……はい、偉そうに補足しました僕です。

僕はというと……

『出来るふうに解説しといて、お前はどうなんだよ?』ってツッこんでいる読者もいるかと思います。なので、以下、僕がもらったコメントも晒します。

編集M
編集M

  キミのね、テーマ(コンセプト)は良いよ。正直、今日見た学生のなかではかなり良い、とオレは思った。

僕

 あ、ありがとうございます!

 ……ね? ドヤらせて下さいよ。編集さんのコメントを解説する資格……ありそうでしょ?

 ちなみに当時の僕は、

(よっし、書籍化だぜ! はよ、名刺くれ!)

 となってました。編集さんが名刺をくれて、僕は連絡先を教える。それで書籍化だぜ、と。

 ……だったら、良かったんですけどね。

編集M
編集M

  ただね~ストーリーとキャラがね……

僕

  す、すいません。ダメでした?

編集M
編集M

  ダメってほどでもないけど……弱い。ん~主人公のモチベーションがさ、共感しづらいからさ。なんか納得できないんだよ、主人公の行動に。だから、ストーリーの展開に乗れないんだよね。

僕

  なるほど。では……

 僕は思ってました。

 ここで上手いこと返答できれば、イケると。書籍化だと。

 でもね、僕が言いよどんでるうちに、

編集M
編集M

  じゃ、そのあたりを意識して、これから頑張ってね!

 と、僕の場合はこんな感じで編集さんとの企画会議は強制的に打ち切られてしまいました。

 終了後の僕としては(いいから名刺をくれ、そのあとでアドバイスも励ましもくれ!)でしたよ。

最後に

 ちなみに、この時見てもらった作品で、書籍化されたものは1作もありませんでした。全滅ではありましたが、まぁ、そんなものらしいです。

 講師の方に言わせれば「新人賞デビューが良いよ。編集部の扱いが違うから」とのこと。

 ま、今ではネット小説から書籍化という流れもあるので、新人賞一択ではないでしょうけど。

僕

 以上、僕の個人的な体験ではありますが、参考にしていただけるとうれしいです!

遊び心
遊び心

 小説家を目指している人にはおおいに参考になる話だね。

本田奈那子
本田奈那子

 小説家になるには自分のテーマ・世界観・コンセプトを明確にしておくと、編集者さんとしても売り出しやすいわよ。

この記事を書いてくれた【クロモリさん】の作品はこちら☟

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